不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
豪がかすかに息をついたように感じた。それから、口を開いた。

「仕事進めておいてくれたのか?」
「うん、週明けに調査報告の一回目を局長に見てもらうつもり。プリントアウトしたから、家で読んで」

資料を手渡すと豪はありがとうと小さく呟き受け取った。そのタイミングで、局長がくれた小箱が視界に入る。

「そうだ。豪、チョコ食べない?局長からもらったんだけど」

いい機会だ。がさがさと包装を解き小箱を開けると、トリュフが四つ入っている。豪は甘いものが嫌いじゃないはず。

「もらおうかな。脳が疲れたから、甘いものがほしい」
「美味しそうだよ」

ふたりでひとつずつつまんで口に入れる。次の瞬間、私たちはふたりそろってむせた。

「あっま!!」
「甘過ぎる!」

チョコレートはけた違いに甘かった。のどに沁みるくらい甘いなんて初めて。

「なんか中から甘いお酒出てきた!」

トリュフ部分の強烈な甘さできついのに、中から度数の高そうな洋酒がどろりと出てきて、余計に喉を刺激する。……脳が融けそうだ。海外のお土産でもらう激甘チョコの十倍くらい甘ったるいんじゃないかな。絶対に局長も持て余しているに違いない。

「これ、売れないんじゃない?」
「売れないだろうな。っていうか、あの夫婦、このチョコ食いきれないからくれたんだろ」

豪が私と同じ考えを口にする。やっぱりそう思うよね。甘いもの好きな私だって厳しい甘さだわ。

「口直しにメシでも食いに行かないか?」

不意に言われたのは食事の誘いだ。私はペットボトルのミネラルウォーターをごくんと嚥下し、豪を見つめ返した。
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