うそつきペン
「え?」


「盗撮されたって気が付いたのに、追いかけないしさ」


そんなの、できるわけないじゃん!!


心の中で叫び声を上げる。


しかしそれは声にはならなかった。


傍観者からすればその程度のことに見えてしまうことが、恐ろしかった。


「前から思ってたけど春子って口先だけだよねぇ」


盗撮の話題から逸れて夕子は言った。


あたしは何か言ってやりたい気持ちをグッと押し込んで「そう?」と、気のない返事をする。
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