うそつきペン
先生はそう言い、あたしに数学のプリントを渡してきた。


うそでしょ……。


あたしは同じように呼び止められた春子を見る。


春子は仏頂面をしたまま自分の机へと戻って行ってしまった。


「ほら、早くやれ」


先生に言われてあたしは渋々自分の席へと戻って行った。


居残りがあるなんて知っていればあたしだってカンニングしたのに。


そう思い、悔しい気持ちで下唇をかみしめた。


やがて教室からは誰もいなくなり、あたしと春子がシャーペンを動かす音だけが聞こえ始めた。


春子は元々成績がいいし、きっとすぐにプリントを終えて帰る事だろう。
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