うそつきペン
☆☆☆

1日入院して精密検査を行ったあたしは、翌日の夕方には退院していた。


まだ右足は固定されていて松葉づえが必要だけれど、歩けないほどではない。


不幸中の幸いだと言われた。


家に戻って来たあたしはすぐに自分の部屋へと向かった。


階段を上がるのがこれほど大変だとは思わなかった。


松葉づえを駆使して、どうにか階段を上がり切り、部屋のドアを開ける。


1日ぶりの自室に入るとすぐに勉強机へと向かった。


夕子たちへの怒りは少しも治まっていない。


夕子たちから心配のメールや電話が来るたびに、裏切られた怒りが再熱した。


「絶対に許さないから……」


あたしはそう呟きながら、うそつきペンを手に取ったのだった。
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