うそつきペン
☆☆☆

その日、結局あたしはノートになにも書く事はできなかった。


どうすれば最善の未来が切り開かれるのかわからない。


そもそも書いた出来事が他人に移るだけで、無くなるわけではないのだ。


どう転んでも誰かが傷つく結果になる。


よく眠る事ができなかったあたしは、寝不足の重たい頭のまま家を出た。


いつもは引き出しに入れて保管しているうそつきペンを、今日はペンケースに入れて来た。


学校にいる間になにか言い案が思い浮かぶかもしれない。


その時のために持ち歩くことにしたのだ。


「アユリ~、まだ怒ってる?」


教室に入る手前で夕子のそんな声が聞こえてきて、あたしは立ち止まった。
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