うそつきペン
夕子はニヤニヤといやらしい笑顔を浮かべて近づいてくる。


「別に……」


あたしはそんな夕子から視線を外し、小さな声でそう答えた。


今さら夕子に何を言っても無駄だろう。


「もう怒ってないよね? あたしたち友達なんだから」


そう言って馴れなれしく手を繋いでくる。


咄嗟に振りほどこうとしたが、痛いくらいに手を掴まれて夕子を見た。


「ちょっと付き合ってよ」


夕子があたしの耳元へ口を寄せてそう囁いたのだった。
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