うそつきペン
財布を握りしめて廊下にでると、怒りと悲しみが湧き上がって来た。


「あ……」


小さな声に気が付いて顔をあげる。


そこにはツグミが立っていた。


相変わらず松葉づえを使っていて、痛々しい姿をしている。


「ツグミ!」


あたしにはまだ友達がいる。


ツグミがいる。


そう、思ったのに……。


ツグミはあたしから視線を外すと、前回と同じようにそのまま通り過ぎて行ってしまったのだった。
< 229 / 281 >

この作品をシェア

pagetop