うそつきペン
恐怖で身がすくむが、それ以上にペンのことで頭は一杯だった。


夕子の胸ポケットに入れられているペンを見る。


違う、このペンじゃない。


自分がどんなペンを奪われたのかも覚えていないのに、本能的にそう感じた。


「返してよあたしのペン!」


あたしは夕子の体を押しのけて机の引き出しを探った。


「やめろよブス!」


夕子が怒鳴り、朱里ちゃんや友里恵ちゃんがあたしの背中を叩く。


それでもあたしは止めなかった。
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