うそつきペン
その表情には明らかな憎悪が感じられてあたしはたじろく。


リタイアしたことがそんなにダメなことだなんて、あたしには思えない。


周囲のクラスメートたちも、夕子の行動に驚いているのがわかった。


「ご、ごめんなさい……」


そう言ってからふと気が付いた。


夕子は間違えて掃除を開始してしまったことをクラス中から笑われていた。


その腹いせでこんなことをしてるんじゃないか?


「怪我とかいって大げさに包帯撒いてるけど、普通に歩けてるしさぁ」


歩けると言っても、まだ足は痛くてひきずってしまうのに……。


心の中ではそう反論するけれど、あたしはなにも言えないままうつむいてしまった。
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