うそつきペン
☆☆☆

次の月曜日は天気が崩れて今にも雨が降り出してしまいそうだった。


だけどあたしの心は晴れている。


うそつきペンを使って痴漢にあったという事実を嘘にしてしまったら、どんどん気持ちが明るくなってきたのだ。


自分の記憶にはしっかりと刻まれているのに、それはまるで他人の記憶をのぞき見しているような感覚になっていた。


あたしの中に残っているのは、素敵なバッグを購入できたという事実だけ。


「あ、夕子おはよう!」


学校の階段の途中で夕子を見つけて声をかけた。
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