強制食料制度
逃げる
買い物袋の中はあっという間に一杯になっていた。


これでしばらくは大丈夫そうだ。


和文から袋を受け取り、後ずさりをして距離を取る。


「これからどこに行くんだよ。お前は日本国民から狙われてるんだぞ」


距離が離れたからか、和文が少し余裕を持った表情でそう言って来た。


「どこへ行っても、ここにいるよりマシ」


「その考えは間違ってる。今からでも遅くないぞ? 俺に謝って、ここに置いてくださいって言ってみろよ」


「誰がそんなこと!」


吐き捨てるように言った次の瞬間、和文の手に包丁が握られていることに気が付いた。


一瞬にして青ざめる。


いつの間に戸棚の中から出したのだろう。
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