強制食料制度
ひとまずベンチに座り、鞄から菓子パンを取り出した。


これ1つで数千円するなんて、昔では考えられなかったことだ。


「食い物持ってるのか」


不意にそんな声が聞こえてきて、息を飲んだ。


見ると暗闇の中に数人の男たちが立っているのが見えた。


明かりがないから、全然気がつかなかった。


あたしはすぐに腰を上げて後退した。


「悪いが、少し分けてもらえねぇか」


雲が散り、月明かりで男たちの姿が浮かび上がって来る。


3人の男たちはみんな一様にガリガリに痩せていて、衣類も汚れ、体も傷だらけだ。


浮浪者かもしれない。


でも、これは貴重な食べ物だ。
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