強制食料制度
☆☆☆

暗闇の中だと知っている道でも全く知らない道に見えて来る。


気が付いた時、あたしは自分の家の近所を歩いていた。


あちこちを歩き回ったせいで足の裏は痛く、疲労が貯まってきていた。


せっかくしっかり眠ることができたのに、それもパアだ。


あたしは自宅の前まで来て足を止めた。


お父さんとお母さんは無事だろうか。


確認した気持ちが湧いてくるが、チャイムを押す事はできなかった。


自分の部屋で眠りたい。


朝起きて、あの質素な朝ご飯を食べて学校へ行きたい。


あたしの願いはただそれだけだった。


「お父さん、お母さん……」


呟いた時、隣の玄関が開く音が聞こえて来た。
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