強制食料制度
よく知っている大学生のお姉さんが顔を覗かせている。


「誰?」


髪を切って帽子を被っているあたしに、お姉さんは怪訝そうな表情を浮かべる。


あたしは何も言わずお姉さんに背を向けて歩き出した。


やっぱりここにいることはできない。


危険すぎる。


「もしかして唯香ちゃん?」


その声に立ち止まってしまった。


お姉さんの声があまりに優しかったから。


「やっぱり唯香ちゃんね!」


お姉さんの声が夜の街に響き渡る。


あたしは一旦振り向いたが足は動かし、お姉さんから遠ざかった。
< 140 / 204 >

この作品をシェア

pagetop