強制食料制度
血と肉と油の匂いが充満する。


「なんで……あんなことを……」


ティッシュで口を拭い、自分のしてしまったことに嫌悪感を抱く。


でも、街の人たちだって同じなのだ。


普段では考えられないような行動をとってしまうくらい、人々は追い詰められている。


このまま食料難が続いて行けば、もっとひどい事態に発展していくことだろう。


ようやく吐き気が治まったあたしは地べたに倒れ込んでいた。


ベッドまで行く気力がない。


このままドロドロに溶けて、床と一体化してしまいたいという、無茶な願望が頭をもたげて来る。


その時だった。


微かな話し声が聞こえてきてあたしは耳を澄ませた。
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