強制食料制度
良の表情が見る見る絶望に満ちて行く。


「本当なんだって! どうして俺が嘘をつく必要があるんだよ!?」


良が手を伸ばして来るが、あたしはそれを振り払っていた。


「あたしを食べるためでしょ?」


そう言うと、良は強く左右に首を振った。


その目には涙が浮かんでいて、普段強気な良はどこにもいなかった。


「行こう、唯香」


俊和の言葉にあたしは頷き、歩き出す。


「待てよ唯香! そいつのことを信用するな!」


良の声がどこか遠くの方から聞こえてきていたのだった。
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