強制食料制度
「自宅でモヤシや豆苗を育ててることは、誰にも言うなよ」


質素なご飯を食べていたお父さんが不意にそう言って来た。


「どうして?」


「家に食べ物があるとバレたら、盗みに入られるだろ」


その言葉に目を丸くする。


「そんなに深刻なの!?」


「今更なに言ってるの? ここ数か月、お肉や卵を食べてないでしょう?」


そう言われればそうかもしれない。


でも、食品はどんどん高価になり、購入できなくなってしまったからだと思い込んでいた。


「肉も卵も、もう売ってないの?」


「ほとんど見かけなくなったわよ。あっても、卵一パック5千円するの」

< 24 / 204 >

この作品をシェア

pagetop