強制食料制度
☆☆☆

男と歩いている間もあたしのスマホは震えていた。


誰でもいい。


助けて!


心の中でそう叫ぶけれど、下手に動くことはできなかった。


男は相変わらずフラフラと左右に揺れながら歩いている。


行きかう人々が視線を向ける時もあるけれど、みんな怪訝そうな顔をうかべて通り過ぎていくだけだった。


「唯香!?」


聞きなれた声にハッとして視線を上げる。


そこにいたのは俊和だった。

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