強制食料制度
ここで誰かに見つかったら本末転倒だ。


あたしははやる気持ちを抑えながら良が鍵を開けるのを待った。


ガチャンッと重たい鍵の開く音がして、門扉が左右に開かれた。


少し錆びついているのか、ギィィィと重たそうな音が響く。


「唯香、ボロボロじゃないか」


あたしを見た良は開口一番にそう言った。


目を丸くしてあたしを下から上まで見つめている。


「ちょっと色々あったから」


そう言って口角を上げてみたけれど、恐怖と寒さのせいで凍り付いて笑顔にはならなかった。


「こっち」


良が手招きをして、あたしは門扉の中へと足を踏み入れた。
< 70 / 204 >

この作品をシェア

pagetop