定期購読ドール
二人でB組へ向かって覗いてみると、教室の中に涙の姿は見えなかった。


カナたちは普通に会話をしているだけで、誰かをイジメている様子もない。


「あれ、どうした?」


そう声をかけてきたのは耕平だった。


アケミへ視線を向けて鼻の下を伸ばしている。


「今日、涙は?」


そう聞くと「来てないよ」と言われた。


「先生は風邪だって言ってたけど、本当かどうかわからない」


そう言って左右に首をふる耕平。


「ねぇ、ちょっと涙の机を見せてくれない?」


「……まぁ、別にいいけど」


ちょっと考えたのち、耕平はそう答えたのだった。
< 104 / 316 >

この作品をシェア

pagetop