定期購読ドール
綺麗だった髪も顔も手入れがされておらず、まるで浮浪者のような姿なので気が付かなかった。


涙はブツブツと何かを呟きながら信号待ちをしている。


「ひ、人違いだよ。行こう」


アケミは和明の腕を掴み、強引に歩き出した。


和明も歩き出すが、涙のことが気になるようで時々後ろを振り向いている。


こんな時に会うなんて、最低!


あんなボロボロの涙を見たら和明がなんて思うか……。


アケミは大股で歩いて近くの公園へと入って行った。


ここからなら涙の姿も見えないし、落ち着いて会話ができる。


「ねぇ和明、さっきの話の続きは?」


心ここにあらずという様子になってしまった和明に、アケミは聞いた。


「あ、あぁ……」


頭をかき困ったように道路へと視線を向ける。
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