定期購読ドール
アケミは屋台後方へと視線を向けた。


涙はどんどん近づいて来ている。


その目はうつろで、美人だった顔は今は黒くくすんでいる。


「もう行こうよ」


アケミが和明の腕をつかんだとき、涙がすぐ目の前まで来ていた。


和明が唖然とした顔で涙を見つめている。


アケミは奥歯を噛みしめた。


いい雰囲気だったのに、こんな時に会うなんて……!


思わず、涙を睨み付ける。


しかし涙はアケミたちの方を軽く見ただけで、なんの反応も見せずに通り過ぎて行ってしまった。
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