定期購読ドール
「アケミ!」


咄嗟に、千夏がアケミの体を押し倒し、拳をかわしていた。


「ヒドイ! ヒドイヒドイヒドイ!」


泣きじゃくりながら、何度も拳を振り上げる涙。


「うるさい! お前に言われたくないんだよ!」


アケミの負けじと怒鳴り返す。


「アケミ、もうやめよう! 涙じゃないんだよ!」


千夏は暴れるアケミの体を抱きしめるようにして立たせると、玄関へと移動した。


その間も涙はクッションやペンを投げつけて来る。


玄関を出る瞬間「絶対に許さないから」と、涙の声が聞こえて来たのだった。
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