定期購読ドール
一万円札が1枚入っている。


「お嬢様なのにこれだけ?」


アケミは呆れ顔でそう言い、お札だけ抜いて内田へ財布を投げ返した。


「まぁ、学校に大金は持ってこないから仕方ないんじゃない?」


千夏は1万円でも満足そうな表情だ。


自分で稼ごうと思うとどのくらい時間がかかるか、ふたりは知らない。


「そっか。じゃあ明日はもっと沢山持ってきてね?」


アケミは内田の前にしゃがみ込んでそう言った。


内田は目に涙を浮かべて身動きもできない状態だ。


「ねぇ、聞いてる?」


アケミが小首をかしげてそう聞いても、内田は反応しなかった。


「ダメだよアケミ。奪っただけじゃ強盗になっちゃう。だから怯えてるんだよね?」
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