定期購読ドール
中へ入るのかと思いきや、その場に立ったまま動こうとしない。


その肩が小刻みに震え始めていた。


「アケミ? どうしたの?」


後ろから声をかけても、アケミは答えなかった。


不審に感じた千夏が玄関を覗き込む。


ちょうどアケミの足元あたりに、半分焦げたドールが座っているのが見えた。


それは中学時代の制服を身に着け、こちらを見上げて笑っているのだ。


「ヒッ!」


悲鳴を上げて後ずさりをする。


「これって……完成したってことかな……?」


立ち尽くしたまま、アケミが呟いた。
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