定期購読ドール
「それなら安心したぁ」


アケミはわざと大げさにそう言った。


「え?」


「和明はあたしの彼氏だよ。浮気現場を目撃しちゃったのかと思って焦った」


表情も変えずに嘘をつくアケミ。


その瞬間、石川涙の顔から笑顔と赤みが消えた。


「彼女……ですか?」


「そうだよ。もしかして彼女がいるの知らなかったの?」


驚いた顔をしてそう訊ねるアケミに、石川涙は頷いた。


「和明ってばヒドイんだから。後でちゃんと怒っておくから、もう帰った方がいいよ?」


優しいふりをして、石川涙の肩を叩く。


「でも……」


トイレの方向を気にしているが、和明が戻って来る気配はまだない。
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