定期購読ドール
「それよりさ、偶然会ったんだからこれからどこか行かない?」


そう言い、アケミは和明の腕を掴んだ。


「でも……」


まだ石川涙のことを気にしているようで、スマホを取り出そうとする和明。


アケミはそれを止めるように、強引に歩き出した。


今連絡を取られたら嘘がバレてしまう。


「おい、どこに行くんだよ」


「パン屋さん。美味しいパンがあるんだよ。きっと和明も好きだと思うなぁ」


「パンなんてひとりで行けよ」


冷たい言葉に、一瞬アケミの表情は険しくなった。


「そんなこと言わないでよ。ね?」
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