定期購読ドール
あの嘘の事を言っているのだ。


「まぁ……見たけど……」


「噂は本物だと思う」


諦めたような口調で言う。


「でも、和明は好きなんだよね?」


その質問に、和明は左右に首を振った。


その態度に、喜びが胸の奥からあふれ出して来る。


「好きだと思った。でも、もうわからない」


今にも踊りだしてしまいそうな喜びを、どうにか胸の奥へと押し込んだ。


「そんなに落ち込まないで……」


アケミはそう言い、和明の手を握りしめた。


和明は咄嗟に手をひっこめようとするが、強く握りしめた。


「和明にはあたしがいるから……なんてね」


ペロッと舌を出してそう言い、照れ隠しのように自分の机へと戻るアケミ。


そんなアケミの姿を和明はずっと見つめていたのだった。
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