定期購読ドール
☆☆☆

体育館横のトイレは滅多に使われることがなく、掃除も適当で済まされているため臭いがキツかった。


千夏がトイレのドアの前に立ち、アケミが内田へ詰め寄った。


「内田ちゃ~ん、この前は5万円で鉛筆お買い上げありがとうねぇ?」


その言葉に内田はアケミから視線を逸らせた。


アケミに買わされたのは使いさしの鉛筆一本だった。


「今度はこのハンカチを買って欲しいんだけど、どう?」


アケミはそう言い、スカート中から白いハンカチを取り出して広げた。


数回使ってポケットに入れたままにしていたから、シワだらけでシミもついている。


「い、いらない……」


喉に張り付いた声でそう答えた。
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