彼女のセカンドライフ

「母さんしっかりしろよ! 病院へ行こう!」

放心状態の凪美子に、喝を入れるかのように、孝太郎が、強く言った。

「就職決まったから、お祝いしましょうだなんて、私、何にも知らないから」

動揺する凪美子。

「違うだろ! 母さん。後悔してる場合じゃない! 俺の意識がない間、彼は必死で回復を祈りながら、目撃者捜しに炎天下、走り回ってくれてたんだ。今度は俺達が彼を支える番だ!」

孝太郎の言葉に、凪美子は勇気づけられる思いがした。

病院では、武尊の母が付き添っていた。

「実はさ――」

言葉を継げるのに、間を置いた武尊。

「前に胃潰瘍で入院した時、バイト先の社長さん、あの人のこと、覚えてる?」

静かに語り出した。

「あぁ、あの綺麗な人? 覚えてるわよ」

「その社長の、蓮見さんとつき合ってる」

「……⁉」

まさかの言葉だった。一瞬理解できなかったが、武尊の言葉が耳に響く。

――蓮見さんとつき合ってる

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