彼女のセカンドライフ
「嘘……!!」 武尊の母は、心の中で疑った。すぐに言葉が返せなかった。
「とは言っても、別れたけどね」
その言葉に母は、すぐにほっとしたものの、武尊の表情を見ると、笑ってはいたが、悲しさを必死に耐えているようだった。
「母さんは、相手の人に何も言えない。あんたが、十代なら、その人に罵倒出来たかもしれないけど、でも、あんたも立派な大人。だから、武尊の好きになった人のこと、まして男女のことにどうこう言えない。それに好き合ってる時に何を言っても聞かないだろうから。でも考えてみて? 堂々と二人並んで外を歩ける? 親子みたいって、笑われても恥かしくない? 親子ほど年の離れた人と結婚でもしようものなら、あんたの未来に、その人が必ず足枷になる時が来る! その時、どんなに好きだった相手でも、邪魔に思えて来るの! 自分の選んだことに、誰かに何かに責任転嫁してしまうの! 今のあんたじゃ未熟で、その人を背負えない! それに蓮見さんって方にも、息子さんがいるなら母さんの気持ち分かるはずだわ」
母親としての素直な気持ちだった。
武尊には分かっていた。母がそんなふうに言うことも。そして今、自分はおろか、誰のことも幸せに出来ないってことも。