God bless you!~第14話「森畑くん、と」
散々なクリスマス

12月25日。
午前4時過ぎ。
ベッドに横たわったまま、アラーム表示を薄目で確かめた。
毎日の習慣でどうしてもこの時間に目が覚めてしまう。
自宅以外というのは、どうも寝つきが良くない。ゆうべの事もあって、寝たような寝ていないような、どこか気だるい感じだった。
昨日は、2学期の終わり。今日から冬休みの始まり。クリスマスイブ……。
確か、彼女の右川カズミと一緒に過ごす予定の……目が覚めたら、都合の悪い事は、全部が夢だったという決着ならいいけど……。
スマホに手を伸ばそうとして、諦める。眠い。面倒くさい。
まだそこまで体が覚醒していない。
塾の時間まではまだ眠れるから……様々な言い訳を頭に思い浮かべながら、俺はまた眠りに落ちた。



どれぐらい気を失っていただろう。
ふと意識が戻ると、遠くでずっと水音がしている。
今頃、風呂か。それとも、顔を洗ってるのか。
水音を聞いているうちに、再び意識が遠のいた。
次に目を開けた時、不意に、足元でふわりと風が起こる。
衣擦れの音。人の気配。
……右川だな。
うっすら目を開けると、何故かバスローブから着替えて、昨日と同じワンピース姿だった。
そこからゆっくりと荷物を取り上げて、後ずさり、抜き足差し足……逃げる気だな。手に取るように分かる自分が哀しい。
いくら右川でも分かるだろう。
昨日から今日、俺がどれだけ怒っているかっ!
俺はそこからいきなり飛び起きた。「うぎゃっ!」
驚いて後ずさりする右川の腕をグイと掴む。
右川は、半分引きつった顔で、にゃ!と笑った。
右川は、ぱちんと音を立てて、両手を合わせると、
「てことで♪」
「あ?なんだそれは」
そんな、小手先の誤魔化しが通じると思っているのか。
「ごめんっ!ほんとごめん。悪かった。あ、あ、謝るからさ、機嫌なおそ?ね?」
「どれ謝ってんだよ。うっかり寝た事か。それとも今、逃げ出そうとした事か!」
「ごめんっ!マジでっ。寝てごめん。逃げてごめん。全部あたしが悪いっ!」
「まだ何か忘れてんだろ」
「?」
「ケーキはどこだよ」
「ケ……ケケ、ケー……え?これ、夢?」
「吐けっ!ここで全部吐け!」
こんな豪華な場所にいて、何故……ケンカ。
一生忘れない。
散々なクリスマスであった。

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