Ｇod bless you！～第１４話「森畑くん、と」

……違った

森畑にメールを送った。
『さっきコンビニに入るとこ見た。本屋を出たら俺も行くから、中で待ってて』
本屋を出て、店の通り反対側。
目を疑った。
コンビニから慌てて出てきた森畑のその後ろ、何故か右川も一緒にいる。
優しくしてやれ、に近い感情を少しでも持ってしまった。
そんな優柔不断の結果がこれだ。
２人は俺には気づかない様子で、どんどん先を行く。言い争ってるようにも見えて……それなのに２人の距離はどんどん縮まって。
まるで、いつかの誰かを見ているような。
２人が別の道に消えて、見えなくなった。
少し考えて、またラインを送る。
『右川に会った？あいつが何か酷い事を言うかもしれない。フザけたヤツだから、あまり深刻にとるなよ』
最初行くと伝えた手前、俺は迷った。
だけど今行ったら、２人の邪魔になるかもしれないし。
溜め息。
譲る気なんか少しも無いのに、気持ちが引いてしまう。今までの誰かみたいに、慣れ合うな！と檄を飛ばせない。このまま森畑に会ったとしても、また的外れな事を晒して終わる気がした。
『ごめん、ちょっと急用が。また塾で』

次の日、また久しぶりの学校だった。
右川はいない。それが寂しくもあり、正直、どこかホッとしている。
生徒会室で浅枝からの報告、選挙の話、立候補してる生徒の名前を、半分上の空で聞いた。
「もう浅枝に間違いないだろ」というと、「それ、こないだ右川先輩にも言われました」
「２人の推薦みたいなもんですよね。あたし頑張ります」
「あいつ元気だった？」と聞くと、「そんなに会ってないんですか？」
それぐらい忙しいと浅枝は納得したらしい。
その日、投票した。
右川は朝早く来て投票、職員室で用事を済まし、そのまま帰ったと言う。
あれから、まだ1度も会っていない。
これは自然な行き違いだから、仕方ない。
そういえばメールも送っていなかった。右川から来る事は無い。
どれも、いつもの、当たり前の事。
特に大きな変化があったわけでもないのに、急に何もかもが遠くなった気がする。
港北大、試験はもうじきだ。
こんなんで本当にいつも通りやれるんだろうか。
ふと、スマホを見ると、１０分前にラインがあった。
森畑だった。
『うりゃ。悪い事は言わないから他の女を探せ。オレが協力する。とにかく合コンだぞ』
いきなり振り切れている。
合コンって、気が早すぎるだろ。まだどこに受かってもいないのに。
右川の事は、文字通り、吹っ切れたのだろうか。文字だけでは分からない。
そこへ、右川からもラインが届いた。驚いた。有り得ない。
２人で示し合わせているとか。
まさか、今も２人で会っていて……マックで仲良く肩を並べ、沢村が落ち込んでるからどうにかしろよ、メールぐらいは送ってやるかな……悔しいのか、悲しいのか自分でも分からなかった。
森畑に酷いことをするなと言った。
言葉にこそ出さなかったが、優しくしてやれと、そんな事を匂わせた。
同じような悔しい思いが、森畑にもあるように思えてならない。
ぼんやりと右川のラインを開く。
『あのさ、港北大の試験って、いつだっけ？』
……違った。
森畑が側にいれば当然、聞くだろう。
だけど喜べない。何度も言った。そんな肝心な事も覚えてないのか。
本人に向かって堂々と聞いてくる。こんな時に限って。
顔色の悪い作業員？のスタンプを恨めし気に眺めた。　
俺の存在って、何なんだろうな。