ラヴ・ミー・テンダー
「もしよろしかったらですけれど…」

「はい」

「一緒に駅まで行って蜂須賀と津雲さんを迎えてくれませんか?」

武智さんが言った。

「えっ、いいんですか?」

それに対して思わず聞き返した私に、
「お願いします」

武智さんは言った。

「それじゃあ、お言葉に甘えて…」

このまま帰ることになってしまうかと思ったけれど、まだ武智さんと一緒にいられることが嬉しかった。

「店じまいの方をするので待ってもらってもいいですか?」

「えっ…勝手に閉めちゃっていいんですか?」

早速と言わんばかりに動き出した武智さんに、私は言った。

「この暑さでお客さんもこないでしょうし」

「た、確かに…。

それじゃあ、外で待ってます」

私は返事をすると、邪魔にならないように外へ出た。
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