ラヴ・ミー・テンダー
私は何かおかしなことを言っただろうか?

「景さん、どうかした?」

そう声をかけた私に、
「あっ…いや、何でもない」

武智さんは慌てたように首を横に振って返事をしてくれた。

「今日はどこかへ食べに行こうか?

陽葵さんも疲れてると思うし…」

「そ、そうだね!

ちょっと待ってて、すぐに着替えてくるから」

提案を出した武智さんに返事をすると、私は着替えをするために自室へと足を向かわせた。

自室のドアを閉めると、私は息を吐いた。

「あんな顔の景さん、初めて見た…」

そう呟いたのと同時に、ふと…と私は気づいた。

「そう言えば…私、景さんのことを何も知らない…」

今さらではあるけれど、私は彼のことを何1つも知らないことに気づいた。
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