ラヴ・ミー・テンダー
「そんな感じだったから、気がついた時には悪い道へと進んでた。

中学時代は、いわゆる不良って呼ばれてるヤツで結構悪いことをやってた。

だけども、父親は俺に興味がなかった」

両親の離婚に、自分に興味もなければ関心もない父親との生活に、武智さんがどれだけ寂しい思いを過ごしてきたのかわかった。

「高校も進学できたと言えば進学できたけど、結局2ヶ月で退学した。

何もすることがなくて何となく毎日を過ごしていたら小池さんーー俺が働いているサイクルショップの店主なんだけどーーに出会って、『サイクルショップ コイケ』で働くことになったんだ」

武智さんは話し過ぎたと言うように息を吐くと、
「それ以来、父親とは疎遠になった。

心配しないようにと思って置き手紙を置いて家を出たけど、父親からの連絡は特になかった」
と、呟いた。
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