ラヴ・ミー・テンダー
「さっきの続きなんですけど…その電話がきて、お葬式に出て欲しいって言われた時、景さんはどうしたんですか?

お葬式には出たんですか?」

私は聞いた。

武智さんは首を横に振ると、
「出なかった。

あの人は父親でも何でもない赤の他人だから関係ない、後はあなたの好きにしてくれって言って電話を切った。

それっきりだった」
と、言った。

武智さんは話を終えたと言うように、ソファーから腰をあげた。

「明日も早いから、もう寝るよ」

そう言って武智さんは自室へと足を向かわせたのだった。

バタン…と、自室のドアが閉まった。

リビングにいるのは、私1人だけになった。

ニュース番組が映っているテレビの画面を切ると、この場が静かになった。
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