ラヴ・ミー・テンダー
「そもそも、最初からケンカしたくないからとか嫌味に聞こえるんじゃないかって怯えてる時点でどうかと思う。

お互いがお互いに気を遣っていたら疲れるだけだし、ケンカもできないんじゃやっていけないぞ」

「うん、そうだね」

首を縦に振ってうなずいた私に、
「ケンカしたら謝ればいいんだし、悪いところがあったら言えばいい。

恋人も夫婦も、そう言うもんだろう?

佃は怯え過ぎだ、気を遣い過ぎだ」

ミヤジはやれやれと言うように息を吐いた。

「えっ、そんな風に見えるの…?」

思わず聞き返した私に、
「見える」

躊躇うことなく答えたミヤジに、私は何も言い返すことができなかった。

「ビシッとせえよ、ビシッと!」

「何それー」

ビシッと私に向けて人差し指を差したミヤジに、私は笑った。
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