ラヴ・ミー・テンダー
ガラス戸から店の中を覗くと、お客さんはそんなにいなかった。

鶏の唐揚げとハイボールが美味しいここは、私が行きつけにしている飲み屋の1つである。

「こんばんわー」

ガラガラとガラス戸を開けてあいさつをすると、
「はい、いらっしゃい…おっ、久しぶりだね」

カウンターからおじさんが迎えてくれた。

「どこか空いてるところに座っていいから」

「ありがとうございます」

私はお礼を言うと、カウンターの席に腰を下ろした。

「最近こなかったけど、また仕事だったの?」

メニュー表を手に持ったら、おじさんが声をかけてきた。

「はい、締め切りに追われていました」

私は笑いながら答えると、メニュー表に視線を落とした。
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