ラヴ・ミー・テンダー
「えっ?」

「あっ…」

目があったのと同時に、私と彼は声を出した。

彼は信じられないと言った様子で、二重の目を大きく見開いていた。

信じられないのは、私も一緒である。

「先ほど、本屋で…」

「え、ええ…」

戸惑っている私たちに、
「あれ?

陽葵ちゃんと武智くん、知りあいなの?」

おじさんがどうしたんだと言うように声をかけてきた。

へえ、“武智さん”って言うんだ…。

珍しい名字だなと、私はそんなことを思った。

「知りあいと言うか…先ほど、本屋でお会いしまして…」

彼――武智さんは照れくさそうに、おじさんに返事をした。

「それで、たった今再会したの?

へえ、奇遇だね」

本当にそうですねと、私は心の中でおじさんに向かって呟いた。
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