ラヴ・ミー・テンダー
話を変えられたことに関して特に疑問も不満も持っていないみたいで、ホッと胸をなで下ろした。

「そうなんですか」

「もし今度よかったら、遊びにきてください」

「ありがとうございます」

その後は、特に当たり障りもない世間話をした。

武智さんと話をしているのは、とても楽しかった。

ずっと前から仲がよかった友達みたいだ。

食事を終えて飲み屋を後にすると、
「もしよろしかったら、途中まで送りましょうか?」

いつかと同じセリフを武智さんが言った。

ある程度の距離は縮まったから、別にいいかな。

そう自分に言い聞かせると、
「それじゃあ、お言葉に甘えて」

私は返事をした。

武智さんはフッと微笑んで歩き出したので、私も彼の後を追うように歩いた。
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