ラヴ・ミー・テンダー
「これは、困ったことになりましたね…」

そう呟いた岩橋氏に、私は返事をすることができなかった。

気まずい沈黙が流れている私たちに、
「お待たせしました、お茶です」

皆川さんが現れてテーブルのうえにお茶を置いてきた。

ゆるふわウェーブがかかっている肩甲骨の長さまであるその髪は生まれつき色素が薄いらしく、キレイな茶色をしていた。

私の真っ直ぐな黒い髪とは大違いである。

清楚でかわいらしい皆川さんはいつ見ても素敵な女性だなと、彼女を編集部で見かけるたびに私は思っていた。

「皆川さん、2ヶ月後に出る雑誌のことについて話があるんだけど」

「はい、何でしょうか?」

話しかけてきた岩橋氏に、皆川さんは首を傾げた。

岩橋氏が私に視線を向けてきた。
< 41 / 155 >

この作品をシェア

pagetop