ラヴ・ミー・テンダー
自宅近くの行きつけのバーで失恋の文句をぶつけている私につきあってくれるのは、ミヤジと聖恵だけである。

「もうすぐで30歳になるのに…」

そう呟いてテーブルに突っ伏した私に、
「大丈夫だ、今は晩婚化してる」

ミヤジが言った。

「でも出産のことや体力のことを考えたら…」

聖恵はそれ以上は言えないと言うように口を閉じた。

「決めた」

私は顔をあげた。

「えっ?」

「何を?」

私の様子にミヤジと聖恵は驚いたと言う顔をした。

「私、もう恋なんかしない」

そう宣言した私に、
「はっ?」

「だ、大丈夫?」

ミヤジと聖恵はポカーンと口を開けてマヌケな顔を見せた。

「そんなにも仕事が大事そうに見えるならば、もう一生仕事に生きてやる!」

声を大きくして宣言すると、私は椅子から立ちあがった。
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