ラヴ・ミー・テンダー
「あっ…」

ふと思い出した私は声をあげた。

「どうした?」

「私…もしかしたら、武智さんに家を教えちゃったかも知れない」

「えっ…お、お前…」

2回目に武智さんと会った時だったかも知れない。

送ってもらった帰り道にマンションの壁を指差して…どうしよう、これは完全に家を教えてしまっている。

そう言えば、自転車のパンクもよくよく考えてみると何だか不自然な気がする…。

まるで武智さんが勤務しているところへと向かえと言わんばかりに…って、大変なことじゃないか!?

「み、ミヤジ、どうしよう…!」

「お、落ち着け落ち着け、犯人はそいつと決まった訳じゃない」

「でもでも…」

「ここで慌てたら負けだ、相手を煽るな」

わかっているけれども、気づいてしまったものは気づいてしまった。
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