ラヴ・ミー・テンダー
「ね…寝るだけでしたら、大丈夫ですよ?」

私は言った。

「えっ?」

「寝るだけでしたら、構いませんので…」

私たちの間に沈黙が流れた。

そのうえ、電話越しと言うのがなおさらのものである。

先に沈黙を破ったのは、
「――今、佃さんの家に行っていいですか…?」

武智さんだった。

「――は、はい…待ってます…」

そう言った武智さんに、私は返事をした。

「到着したら、すぐに電話します」

「はい…」

私たちはそう言いあうと、電話を切った。

スマートフォンをテーブルのうえに置くと、身の回りのものをすぐに片づけた。

読みかけの本を本棚に戻すと、クイックルワイパーでフローリングを掃除した。

「後は、大丈夫だよね」

簡単に掃除を済ませると、テーブルのうえに置いたスマートフォンが震えた。
< 63 / 155 >

この作品をシェア

pagetop