ラヴ・ミー・テンダー
行きつけのバーの前でミヤジと聖恵に別れを告げると、私は自宅へと足を向かわせた。

お酒を飲み過ぎて酔っ払った躰に冷たい風が心地よい。

空を見あげると、真っ黒だった。

星は1つも見当たらない。

「――2度としないわ、恋なんか…」

自嘲気味に呟いて息を吐いて、自宅へと足を進めた。

酔った勢いで偉そうに“恋なんてしない、仕事に生きる宣言!”なんてしちゃったけれど、
「――後少しで30だから結婚したいのよ…」

そう呟いたら、涙が出そうになった。

ああ、もう我ながら面倒くさい女だ…。

もうすぐ30歳の女が失恋のショックでやけ酒して酔っぱらって、そのうえ泣いているなんて、文字通りの面倒くさい女じゃない…。
< 7 / 155 >

この作品をシェア

pagetop