ラヴ・ミー・テンダー
「陽葵ちゃん、大丈夫だった?

暴漢に襲われたって…」

そう声をかけてきた芽実に、
「私は大丈夫、彼が助けてくれたから」

私は返事をすると、隣りにいる武智さんに視線を向けた。

「初めまして、武智です」

芽実と目があった武智さんは小さく頭を下げた。

「妹の佃芽実です、姉のことを助けてくれたそうで」

そう言って頭を下げた芽実に、
「いえ、たまたまですから」

武智さんは照れくさそうに返事をしたのだった。

たまたまだったとは言え、彼が現れてくれなかったら私はどうなっていたのだろうか…?

そう考えただけで、ゾクッと躰が震えたのがわかった。

芽実と一緒に警察署を後にすると、
「ごめんね、仕事中に呼び出しちゃって」

私はすぐに彼女に謝った。

実家は遠いし、すぐに近い身内は芽実しかいなかったのだ。
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