ラヴ・ミー・テンダー
ツーブロックにした黒い髪は、とても爽やかな印象を感じた。

二重の切れ長の目が私を見つめている。

「もしかして、酔ってますか?」

そう聞いてきた彼に、
「酔っていると言えば酔っていますけど、大丈夫です。

家、近いですし…」

私は答えた。

「よろしかったら、途中まで送りましょうか?」

「いえ、大丈夫です。

1人でちゃんと帰れますので…」

心配そうに見ている彼から逃げるように、私は足を進めた。

住んでいるマンションに滑り込むようにして入ると、住んでいる部屋に早足で向かった。

ドアを開けて中に入ると、私は息を吐いた。

酔いなんて、もう醒めてしまっていた。

「やっぱり、途中でもいいから送ってもらった方がよかったかも…」

そう呟いた私だけど、すぐに首を横に振って否定した。
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