エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
シンディとヒューゴは目を見合わせながら含み笑いをする。シンディの手は自然にヒューゴの腕に添えられていて、その仲睦まじい様子にベリルの胸は痛んだ。

(シンディ姉さまも、ヒューゴ様が好きなのかしら)

シンディは華やかな美人で、男性人気が高い。
家柄の良さもあり、舞い込んでくる縁談は大量で、父はそれらを吟味して厳選した相手だけをシンディへ紹介している。だが、今のところ彼女は、縁談をことごとく断っている。
父には家柄的に下になるアシュリー伯爵家に長女を嫁がせる気はないだろう。しかし、シンディは意思が強い。何としてでもヒューゴへの恋を実らせようと思っているなら、それも納得だ。

(こんなに仲がいいんですものね)

いつか、ヒューゴが自分の義理の兄になることを想像すると胸が痛い。けれど、シンディがそこまで彼を思っているなら、ふたりのことを応援したいとも思っていた。
政略結婚の駒としてなら、まだ自分がいるのだから。

ベリルはシンディに手を引かれ、別室へと赴く。
夜会のメイン会場は広間だけれど、気の合う仲間同士が応接室に集うことはよくある。だから応接室に行くのだと思い込んでいたが、連れてこられたのは屋敷の中でも奥まった場所にある小部屋だ。

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