エメラルドの祝福~願えよ、さらば叶えられん~
背中をさすりながら、ベリルは彼女のネックレスを外そうと手にかけた。
「何をするの?」
「それは身に着けておかない方がいいわ。身を滅ぼすこともある魔石だそうよ。あんなに綺麗で自信満々だったシンディ姉さまがこんなになるなんておかしいでしょう? この石のせいだわ。取ったりしないから、体からは外して?」
シンディは疑心暗鬼なようで、何度もベリルを見つめたが、やがて自らそれを外した。ころん、と石が足もとに落ち、シャンデリアの光を受けて怪しく輝いている。
それを困惑した様子で見つめるシンディは、ベリルの腕を掴んだまま、ぽつりとつぶやいた。
「……これには望みをかなえる力が備わっているんですって」
「え?」
「どこから入手したのかは教えてもらえなかった。魔力がこもっていて、人の願いを叶えるという言い伝えのある宝玉だと、ヒューゴは言っていたわ。でも願いを叶えるには同等の価値のある対価がいるそうなの。……私がベリルになりたいと願ったとき、顔が入れ替わったんだから本物なんだと思う。ヒューゴはいつも賭けポーカーの景品を探しているの。時には闇市を見に行ったり、危険なこともしているって聞いたわ。私はやめてほしくて、もうそんなことはやめて私のことだけを見てほしいって言ったの。でも逆に彼の心が離れていって……。魔石に願ったのよ。ヒューゴの心をつなぎ留めたいって。そうしたら、ヒューゴが私の身につけていた指輪を凝視しているのに気が付いたの。あげたらすごく喜んだわ。愛してると言ってくれた」
「え?」
ベリルが見返すと、シンディは悔しそうに唇を噛んだ。